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トレチノイン外用療法

トレチノインによるシミ治療について

 原理

表皮の細胞は表皮の一番深い層(基底層といいます)で生まれてから、徐々に表面に押し上げられて、やがて角質となり、最後はあかとなって皮膚からはがれていきます。この表皮の細胞の一生のサイクルを皮膚のターンオーバーと呼び、約4週間かかることが知られています。大多数のシミは、表皮の一番深い層(基底層)周辺にメラニン色素が沈着しています。この層にはメラノサイトと呼ばれるメラニンを作る細胞があります。トレチノインは、表皮の深い層にあるメラニン色素を外に出してしまう働きを持っています。トレチノインは表皮の細胞を活発に増殖させるために、表皮の細胞はどんどん押し上げられていき、そのときにメラニン色素を一緒に持って上がっていき、2~4週間でメラニン色素を外に出していきます。これがトレチノインの特徴です。本治療は、この期間ずっと、強い漂白剤であるハイドロキノンを作用させて、メラノサイトに新しいメラニンを作らせなくしておきます。そうすると結果的に、表皮はメラニン色素の少ない、きれいな新しい皮膚に置き換えられることになります。

本治療に使用される薬剤 

1.トレチノイン

非常に強力な作用がありますから、医師の指導のもとにお使いいただかなければなりません。この薬は、しみを古い表皮の細胞とともに、あかとして押し出してくれます。そして新しい表皮を作り上げます。

  副作用:使用すると反応性の皮膚炎が起こります。赤くなったり、ぽろぽろと角質が取れてきます。このような反応はアレルギー反応(すなわち、薬かぶれ)として起こっているわけではありません。適度な範囲であれば全く心配ありません。薬が効いていることのひとつの目安です。とくに反応が強いときは、ご相談ください。

2.ハイドロキノン

  ハイドロキノンはメラニン合成酵素であるチロジナーゼの阻害剤であり、さらにメラニン色素を作るメラノサイトに対して細胞毒性があります。すなわち、しみの原因であるメラニン色素を作らせなくする漂白剤です。またビタミンC誘導体を7%配合しており、ビタミンCの抗酸化作用も期待できます。ですから、この軟膏は強力な美白剤となります。市販の美白製品では、アルブチン、コウジ酸、プラセンタエキスなどを配合した化粧品や医薬部外品が多数ありますが、成分の作用がハイドロキノンに比べて非常に弱い(100分の1程度)ため、市販されている濃度では実際の効果は期待できません。

  副作用:特にレチノイン酸治療のように角質を取る治療をしているときには、ハイドロキノンはしみるためヒリヒリしたり、皮膚が少し赤くなったりすることがあります。刺激が特に強い場合は、このハイドロキノンを中止するのではなく、トレチノインの方を一時お休みしましょう。この他に、しみの種類やお肌の状態により、内服薬、保水剤、オイル、日焼け止めクリームなどが必要になります。

治療経過

治療は、前半の漂白していく治療期間(2~6週間)と後半の炎症を冷ましていく期間(2~6週間)に分かれます。使用開始後、治療部位の皮膚が赤くなり、あかのように皮膚がぽろぽろむけてきます。その後、徐々に赤みが増してきますが、しみは薄くなってきます。始めの1~2週間は一番つらい時期ですが、その後お肌が薬に慣れてきて赤みやしみる感じもなくなっていきます。漂白治療中は、必ず最低2週間に1度は診察を受けてください。薬は診察の都度、変更されていきます。皮膚が乾燥しすぎる場合は保水剤やオイルなどを医師の指示に従い使用してください。しみの治療期間の目安は8~12週間です。改善した後はメインテナンス用ケアを行いますが、必要に応じて2回目の治療を、1ないし2ヶ月の間をおいて行うことができます。

基本的なプロトコール

顔のしみ治療の基本となるプロトコールです。まずは以下の方法で治療を開始しましょう。

1.  現在お使いになっているクレンジングと洗顔料で洗顔します。良く泡立ててごしごしこすらないようにしましょう。

2.  化粧水 刺激の少ないもの。適度な保水成分を含むもの。

3.  ハイドロキノンを塗ります。

これは指で、広くはみ出して(例えば顔全体に)塗ってください。

4.  トレチノインを、しみの部分からはみ出さないようにベビー綿棒で薄く丁寧に塗り、乾かします(数分)。

 ・赤みが強かったり、痛みがある場合は夜のみ1回お使いください。

 ・境界がはっきりしているときは、なるべくしみのふちから出ないようにしてください。

 ・反応、刺激が強すぎる時はトレチノインのみをお休みして、御相談ください。

5.  朝は、日焼け止めクリームもしくはUVカット入りの化粧下地クリームを塗ります。強くこすらずに、上に重ねて置くかんじで塗ってください。余分な分はティッシュペーパーなどで静かにふき取りましょう。

6.  お化粧をする場合は、クリームやパウダー(UVカット入り)のファンデーションを使います。コンシーラーやパーフェクトカバーなどのカバー用ファンデーションを使うこともできます。夜の場合は、 オイルでカバーすると皮膚のツッパリ感や乾燥を防ぐことができます。

以上の塗り方は、治療開始時の塗り方です。治療が進むにつれ、薬の内容、塗り方等が多少変わってきます。

塗り方のこつ

・トレチノインは面倒でも丁寧に塗りましょう。

・厚さは?---厚く塗らないで、ごく薄くついているだけにしましょう。拭き取ってもいい

です。

・広さは?---ベビー綿棒で、できるだけ狭く、広がらないように使いましょう。

・ハイドロキノンはお休みしないようにしましょう。トレチノインと異なり、できるだけ広い範囲に伸ばすことが重要です。

 

トレチノインによるにきび治療について

原理

にきびは皮脂線の機能が亢進するとともに、毛孔の入り口に角質が異常に厚くなり蓋をすることにより起こります。トレチノインは、皮脂腺を萎縮させ、皮脂腺の機能を低下させるとともに、毛穴にふたをしている角質(角栓)をはがれやすくすることによって、にきびを治していきます。トレチノインを始めとするレチノイド(ビタミンAの誘導体の総称)は非常に有効なにきび治療薬として、欧米ではにきび治療の第一選択薬となっています。

にきび治療の基本プロトコール

1日2回朝と夜、もしくは1日1回夜に、使用します。

  1. 洗顔する。良く泡立てて、ごしごしこすらないようにしましょう。
  2. 化粧水 刺激の少ないもの。適度な保水成分を含むものを使用してください。
  3. トレチノインを患部に薄く塗布する。

しみの治療と異なり、広くうすく使用します。目や口の近くは避けましょう。

  1. 保湿用乳液や美容液、ジェルなど(ノンコメドジェニック製品)を塗布します。
  2. 朝は必ず日焼け止めクリームを使用します。化粧は行なってもかまいません。夜はナイトクリームなどを使用してもよろしいです。
  3. 指示により必要に応じて、ビタミン剤、抗生物質や抗アンドロゲン剤などの内服・外用を並行して行ないます。

以上の塗り方は、治療開始時の使い方です。

治療が進むにつれ、薬の内容、塗り方等が多少変わってきます。

 

トレチノインによるしみ・にきび治療に共通の注意事項

一般的な注意

・トレチノイン、ハイドロキノンは冷蔵庫で必ず保存してください。

・顔の部分によって反応に差があります。

 効きやすい個所:口のまわり(少々ついただけでも反応が起こる)、目のまわり

 効きにくい個所:Tゾーン(高濃度を必要とすることもある)、手・足

・処方された内服薬は食事とは関係なく、規則的に服用するようにして下さい。

・にきびには不規則な生活やストレスが影響しますので、規則正しい食事や睡眠を心がけ、気晴

らしや休息を十分取るようにしましょう。

・原則的に化粧水、乳液、ローションなど現在使用中のものを使用していただきますが、化粧水は保湿目的でセラミドなどを配合した化粧水、その後で坑酸化薬として作用するアスコルビン酸リン酸エステル入りの化粧水の使用を推奨します。

・プール、温泉、パーマ、毛染めは原則控えるようにしてください。

・にきびが十分に改善した後も、メインテナンスを続けていく必要があります。2-3ヶ月続けることでにきび後の赤みも消えていきます。

・にきび痕の治療にはさらにアブレージョンなど他の治療が必要になりますが、その前にこの治療を行うことが必要です。

これから赤ちゃんを作る予定のある方へ

トレチノインは、動物実験では大量内服投与によって奇形を生ずることが知られてます。ヒトでは、トレチノイン外用との因果関係が明らかな奇形発生はこれまでありません。しかし、念のためトレチノイン治療中は避妊を行なってください(治療の前後3ヶ月、計6ヶ月)。

皮膚がむけ、赤くなってきたら(治療開始2~3日後)

この治療をはじめてから、通常、1日は何事も起こりません。ところが、2、3日ほど経つと、 塗ったところとその周辺の皮膚がポロポロとむけ、赤くなってきます。顔を洗うときも、ヒリヒリすることがあります。 この反応は、トレチノイン治療には必ず伴う反応です。また、本治療を中止すれば、徐々に回復します。皮は無理にむかず、自然にはがれるのを待ってください。このように皮膚がむけ始めましたら、次のことに注意してください。

1)保湿ケア

トレチノイン治療中は、皮膚の角質層がはがれますので、皮膚のバリアー機能や水分保持機能がなくなっています。治療部位では水分がどんどん蒸発して、皮膚が乾いて突っ張ったりします。また、バリアー機能がないため、いろんな刺激や外敵から皮膚を守るために皮膚を保護する必要があります。指示に従い、適切なスキンケアを行ってください。

2)紫外線のケア

トレチノイン使用中は、紫外線の影響を非常に受けやすい状態になっています。従って、紫外線のケアが悪いと かえってしみを呼ぶことになってしまいます。指示に従い、適切な紫外線ケアを使用しましょう。刺激の少ないサンスクリーン(紫外線吸収剤が入っていない製品)や遮光用ファンデーションなどを使用します。特に汗をかく季節には紫外線ケアがおろそかになりますので、日中は頻繁に気を配るようにして下さい。

治療を中断したほうがよい症状

以下の症状が出た場合には、早めにご相談ください。

    *痛みが強すぎる。

    *所々血がにじんでいる。

    *数箇所ひどくしみるところがある。

    *赤くなりすぎる。

その他、不安があるようでしたら、いったんトレチノインのみを中止して次回の診察のときにご相談ください。

自分の判断で中止すると炎症後色素沈着を誘発することがありますので、中断する場合も指示を受けて下さい。緊急には、お電話などでの相談もお受けします。

1週間使ってもまったく赤くならない場合

濃度が肌質に合っていない可能性があります。

はやめにご相談ください。

しみにたいする治療効果

治療効果には個人差があります。数回(数クール)の治療が必要となる場合やしみが完全になくならない場合もあり、「必ずあとかたもなくきれいになる」といった過度の期待は禁物です。

治りにくいにきびについて

ほとんどのにきびは、トレチノイン治療開始後3週間程度で改善しますが、女性の場合、トレチノイン治療にもかかわらず周期的に新しいにきびが見られることがあります。月経開始前に症状が悪化することがよくあります。また、難治性にきびや胸や背中など広範囲にできる場合などは、血液検査やホルモン治療など全身的な治療が必要になる場合もあります。

 

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