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けが

やけど以外のけが(外傷)はその程度は年齢や受傷原因が様々で、受傷部位、受傷後の時間、受診までの処置、基礎疾患の有無、創部の解剖学的部位、合併症の有無、外力の大きさ、細菌汚染の程度、創の形状などから、処置方法を十分検討する必要があります。特に創部の解剖学的部位の検討は、創部の深さによって、重要な組織の損傷がないか、十分に確認後に、可能な限り、もとに戻す処置が必要になります。

皮膚の構造

皮膚は大きく分けて表皮と真皮から構成されます。表皮はそのほとんどが表皮角化細胞といった細胞成分から構成されます。一方で真皮はほとんどが細胞外成分であるコラーゲンやエラスチンといった、線維成分で構築されており、その中に細胞成分(線維芽細胞など)が存在します。皮膚全層のうち、表皮の厚さは1/10かそれ以下です。

傷が治る大原則

上記の通り、表皮と真皮は全く別もので、表皮は再生しますが、真皮は再生されることはなく修復されるだけです。つまり、傷が治るということは、真皮が修復された表面を表皮が再生されて被覆することにより達成されます。真皮が修復された表面に表皮が再生された部分では、正常皮膚とは違う外観を示すようになり、これがいわゆる傷あとです。つまり、真皮の深い部分まで損傷を受けた場合は、傷あとが残ると考えていただければと思います。

外傷の種類

外傷とは、外力(機械的、物理的、化学的)により生じた組織・臓器の損傷のことです。形成外科では、顔面、手足などにおいて、骨や筋・腱、神経、血管その他軟部組織の外傷も扱いますが、この項では日常生活で最も多く遭遇する、機械的外力により生じた皮膚損傷(いわゆる創傷)に関して述べます。  創傷の「創」は皮膚や粘膜の一部が開放性に組織離断を来す“ケガ”を言います。一方、「傷」は皮下組織の非開放性(傷口がない)損傷をさします。したがってほとんどのいわゆる“ケガ”は「創傷」の中でも傷口がある「創」ということになります。

 創に対する処置は、深さ、大きさ、組織損傷の度合い、汚染の程度などにより異なります。また、受傷機転により創部の性状が異なり、1.切創(切りキズ)、2.擦過傷(すりキズ)、3.挫創・挫滅創、4.刺創(刺しキズ)、5.咬傷(咬みキズ)、などに分けられます。創がきれいに治るためには初期治療が非常に重要ですので、創傷を受傷した場合は、速やかに形成外科のある医療施設の受診をお勧めします。

1.切創

 ガラス片や刃物など鋭利なもので切れたいわゆる切りキズです。手足の切創においては、比較的浅い層を走行する神経、血管、腱などの損傷を伴い易く、早期にそれらの損傷の有無を確認し、適切な処置を受ける必要があります。また顔面の切創においても、顔面神経、涙小管、耳下腺管などの損傷を伴う場合があり、形成外科的専門治療が必要となる場合があります。また、出血が多い場合には、止血を目的とした縫合処置が必要であり、局所をガーゼ等で保護・圧迫挙上しつつ、できるだけ早く最寄りの医療施設を受診して下さい。切創の場合、一般的に周囲組織の損傷は軽度であり、縫合処置等により早期治癒が期待できます。

 2.擦過傷

 道路のアスファルトや塀などにこすりつけることにより、皮膚が擦り剥けた創傷です。皮膚損傷は浅く、多くの場合縫合せずに治ります。しかし、創面に微細な土砂、ゴミなどが埋入し、治ったあとも皮膚の中に残ってしまう場合があります。この状態を外傷性刺青と言いますが、これを防ぐためには受傷後早期に創部の十分な洗浄・ブラッシングを行ない、細かな異物を除去しておくことが大切です。すりキズは初期治療が重要といえましょう。

3.挫創・挫滅創

 鈍的外傷により生じた皮膚の損傷であり、切創に比べて創部周囲の損傷が高度なことが特徴です。創縁の損傷の程度により、治癒に時間がかかることがあり、時に傷んだ組織を切除して縫合する場合もあります。また、創部の汚染を伴っている場合はその後の感染の危険性も高く、初期治療時に十分な洗浄を行なう必要があります。損傷が皮膚のみならず皮下組織に拡大している挫滅創に至っては早期に医療施設で専門的治療を受けましょう。

 4.刺創

 鋭利な器具が突き刺さって生じる創で、創口が小さくても奥行きが深いのが特徴です。異物が残っている場合には摘出が必要です。また深部におよんだ場合には血管損傷や神経損傷、さらには重要な臓器損傷の可能性があります。このような場合、異物の除去や止血、深部組織の修復が必須となります。

 5.咬傷

 ヒトや動物に咬まれた後に生ずる創傷です。歯型に合致した創口の形態が特徴的です。歯牙に付着している雑菌が組織内に押込められることにより、受傷後感染の頻度が最も高い創傷のひとつです。一般的に、感染回避に治療の重点がおかれ、十分な洗浄、抗生剤の投与、破傷風の予防注射などが行なわれ、創部は開放創のままで二次治癒を図ります。閉創すると、膿瘍を形成することがあるからです。

顔のけが(骨折を含まない)

顔は血液の流れが豊富なため、感染に強く、また、傷の治りも早いとされています。可能な限り、損傷を受けた組織をもとに戻し、丁寧に縫合することで、傷あとを目立たなくさせることが可能です。特に、まぶたやくちびるなどは、適切な位置に戻さないと、傷あとが目立つことになります。一方、血流が豊富なため出血が多い分、注意しないと重要な組織の損傷を見逃すことがあり、傷あとの修正や、重要組織の再建手術は困難なことが多いため、初期治療が重要になります。注意すべき組織としては運動神経として、顔の筋肉を動かす顔面神経、知覚神経として、顔の知覚を司る三叉神経が重要です。また、頬の深いきずでは耳下腺から口腔内に排出される唾液が通る、耳下腺管や、瞼に及ぶけがでは、涙を鼻に流す管である、涙小管や涙囊の損傷に注意が必要です。

このように、整容面だけでなく、機能面においても十分に検討して治療にあたる必要があります。

手・指のけが

手・指のけがは頻繁に遭遇する外傷のひとつです。手は複雑かつ繊細な動きを有しており、機能面において非常に重要です。実際のけがが、皮膚だけのものであるのか、それ以上深いものであるのかは、十分に注意して診断する必要があります。神経、腱、筋肉、骨の損傷がないか、適切な診断・初期対応により後遺症を最小限にとどめなくてはなりません。

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